ななこのブログ

服を着て映画を見てごはんを食べてときどき旅に出るなどを綴ります

おやすみ

 

 おひさしぶりです。
 今日は半年以上書こう書こうと思って書けていなかった、自分の転職経験を書きとめるため復活しました。
 世の中にはこんな転職方法がいいよ!というわたしの記録よりためになる情報がやまほどあると思いますので、あんまり参考にはならないかもなのですが、自分にとっては恥と感じている部分も多いことだけれどもせきららな実録ってやつを書いてやるぜ!という気概で書きます。でも身バレはしたくないのである程度ミスリードは入れます。
 なぜ今日書くかというと、会社を本日はじめて欠勤したからです。台風来てるし、ここ数週間疲れが溜まって毎日起きるのがしんどい日々が続いてたし、ああそろそろ休んだほうが心身のためだな。という冷静な判断に基づいた休みです。メンテナンスです。もうめっちゃ前向き、むしろ自分を褒めたい。褒めるわ。みんな褒めて。そしてみんなほどよくサボって自分を休ませようね。

 わたしは現在29ですが、この年齢にしてはかなりの転職を繰り返してきました。いま7社目かな。
 転職するうえで、かなりの時間をネットに費やしました。転職するひとみんながまず思うことだと思うのですが、転職しよう!と決めた後、じゃあ実際どう活動すればいいんだ?と悩むからです。
 わたしもちゃんと考えて転職しよう、と決めたのは今回の転職がはじめてでした。それまではかなりいきあたりばったりでした。

 本題に入る前に簡単に自己紹介すると、新卒で入社した契約社員の接客業でわたしは心を病みました。うつ病と診断されたわけではなかったけれど、出勤・退勤するとき毎日涙がとまらない。後半は仕事中も涙があふれてしまいバックヤードかトイレにこもって泣いてしまう。ある日とうとう職場の駅まで着いて、もう視界に職場へのドアがあるのに涙が出て歩けないという事態に陥り、仕事を休みました。その後話しあいを経て(まともな話しあいではなかったかもしれない)1か月後に辞めました。いま思い返すと本当に病んでたなあと思う。4か月で辞めました。

 そのときはじめて転職というものをすることになったのですが、はっきりやりたいことが決まっていたのですんなり決まりました。すごくしんどい4か月だったので、好きなことをしよう!と思ったのです。それで映画館で勤めはじめました。映画館の求人はいくつかあって、映画館のサイトでたしか見たんだと思います。好きだと思っている映画館がふたつあったので、そのうちひとつにまず応募しました。そして受かりました。もう5年以上前のことですが、映画館で働けたよろこびがいまでもわたしの心には残っていて(すさまじいトラブルメーカーだったのでたくさんの失敗経験、トラウマもあるけれども)、映画が好きということが理由のひとつでいまの会社ともご縁があったので、とても感謝しています。
 まぁ映画館も2年たたずに辞めてしまい、その後も転職を繰り返したのですが、そこからはほぼすべて転職サイトを経由した転職でした。ではここから本題です。

ハローワーク
・転職サイト
・転職エージェント
・その他

 転職するとき使える主なツールはこの4つだと思います。というかわたしが使ったのはこの4つでしたので、順番に書いていきます。(なお特定の企業を批判・非難する意図はとくにありません。わたしのスタイルには合わなかったというだけ!)


ハローワーク
 ハローワークはブラックな企業が多い!職員もやさしくない!というネットの情報をさんざん見ていたわたしは、その刷り込みゆえにハロワに行くことにおびえ恐れ長らく行きませんでした。しかし2回連続で試用期間中に退職し、すっかり自信や希望を失いまたしくしく泣いていたところ親にすすめられ、びくびく行きました。
 結果としてはとても良かったと思います。まずわたしの地元のハロワは職員のひとがしぬほどやさしかったのです。2回ぐらいマジ泣きしそうになりました、建物出るまで耐えたけど。転職というのは孤独な戦いで、まっくらな道を手さぐりで進まなければならない、ゴールが見えない活動です(というのはわたしの言葉ではなく後に出会うエージェントさんの言葉)。だから直接、親身になって相談に乗ってくれるひとがいることを知れただけで、ハロワのことを好きになれました。

 求人の質という面では、正直書類選考で落とされるか一次面接で落ちるかしか経験ないのでなんともいえませんが、まぁ場所によるのかなという気はします。ハロワは地域密着型の求人が多いので、都内にお住まいの方なら求人数・給与は田舎に比べれば潤沢ではないでしょうか。田舎の端っこに住むわたしにとって、ハロワは地元に近い場所の求人をさがせることはメリットでした。
 ただ求人検索はしにくいです。あと雇用保険の手続きが手間、などべんりさに欠けるところはたくさんありました。しかし前述したように「しんどくて落ち込んでいるときにやさしく話を聞いてくれるひと」がいたのは、わたしにとってハロワだけでした。解決してくれるとかではないし、わたしも具体的に泣きごとを言ったわけではなかったのですが、対応がすごく親切だったんですよね。そういう意味でハロワは心に残っています。


・転職サイト
 さて、実際に就職できたツールはこの転職サイトです。下記に挙げる大手以外にもいくつか登録はしたのですが、いちばん求人数が多く使ったのがやはり下記大手だったので、各転職サイトへの感想を述べます。

<エン転職>
 ここはダントツでデザインが良いです。なにそれ…と思われるかもしれませんが、いやデザインが良いって大事なんですよ。求人検索するときに見にくかったらやる気が削がれるから。
 しかしわたしはここ経由で応募して就職した2社が試用期間中に退職し若干心を病みかけたので、それからは眺めたりたまに応募したりはしたけれどあまり積極的には使いませんでした。実際はどうかわかりませんが、わたしにとっては求人の質が悪い、という結論に至ったからです。

リクナビネクスト>
 最大手ですね。ネットで転職サイトの評判を調べると必ずといっていいほどおすすめされるところです。
 ですがわたしにとっては最悪でした。ここで就職を決めたことはなかったのですが、いくつか応募はして選考は進みました。その選考があまりにひどかったからです。面接のときに採用条件や契約内容を聞くと、その中身がリクナビネクストに掲載あったこととあまりにかけ離れている。いや、ちゃんと中身確認して掲載した??インタビューした?? 嘘の情報ばっかのってましたけど??と茫然としました。まぁリクナビネクストのせいじゃなくて企業の責任のほうが大きいと思うんですが、それにしてもそういうことが続いた企業がこちら経由で応募したところばかりでしたので、わたしはあまりに合わなかったです。
 いま思うと営業職の募集が多い印象があったので、わたしのような事務職希望には合わなかったのかもしれません。おなじリクルートが持っているとらばーゆのほうが合ってました。

マイナビ転職>
 いま就職している職場はこちら経由で応募しました。だから、というのもありますが、この転職サイトがいちばん好きです。デザインはそれなりで見やすいし、マイナビ転職から応募した企業は良い印象のところがかなり多かったためです。面接できちんとこちらの質問に受け答えてくれる、会社の事業や仕事の説明をあちらからしてくれる、など当たり前であってほしいことをきちんとしてくれる企業が多かったという印象です。
 わたしはひとつ前の職場は@typeの転職サイトのひとつ、女の転職から応募しました。そこで仲良くなった親会社のひとはマイナビ転職で就職していて、やっぱりマイナビ転職だよ!とか言っていたのを思い出します。

 最近はフェイスブック経由で応募するツールやその他アプリも潤沢にあるので、一言に転職サイトといっても悩むところかと思いますが、わたしの感想としてはメインで使うツールは3つまでがいい、ということがあります。登録するだけ登録する!とかははじめの頃はいいと思いますが、この世にはあまりにたくさんの求人があるので、結果として手にあまってしまうからです。
 上記にあるような大手をひとつ、業界もしくは職種に特化したサイトをひとつ、とか。あと登録するだけしてほぼ使わなかった「Wantedly Visit」はフェイスブックアカウントありきのアプリだったと思うのですが、けっこうおもしろそうだな、と思う求人が多かった印象です。


・転職エージェント
 エージェントは絶対に使え!といいますね。その転職エージェントの話です。
 わたしはいくつか登録しました。その経験から言うと、たしかに登録はしたほうがいいと思います。求人の質とか実際応募するとかは置いておいて、自分のモチベーションに繋がるからです。

 直近で使わせてもらい、また印象に残っているおすすめのエージェントはワークポートです。ワークポートは1か月とすこしで退職した職場の、でもとても良くしてくださった先輩にすすめられたサービスです。2回の転職で使いました。ここは最初にエージェントと一対一でじっくり話し、状況を確認しあいます。そして求人をその日のうちに紹介してもらえます。ふたりのエージェントの方と話しましたが、ふたりとも若手のばりばりの営業マンという印象で、現実的なことに加え前向きなことも言ってくれるので最初に登録するところとしては転職モチベーションが向上できるのでおすすめです。

 おそらくエージェントは成功報酬型だと思いますのでこんなこと言うのは気がひけるのですが、このモチベーションというのはかなり重要だと思います。だから実際使うか使わないかは最初の面談で決めればいいことなので(実際、その会社というかエージェント個人と合うか合わないかはあると思いますし)本気で転職しようと思っているひとは一度行くことをおすすめします。ちなみに本気で転職、というのは追いつめられてるひとと想定しています。
 わたしが2度目にワークポートのエージェントへ面談を申し込んだのは、ひとつ前の会社を辞めると決めて会社にもそのことを告げた翌週でした。つまりもう辞める時期が決まっていて、後戻りができなくて、なにがなんでも転職しな
いといけないと気負っていたときです。20代最後だしもう転職したくないしきっちりちゃんと転職したい、と心に決めていました。転職活動を開始するはじめの段階でエージェントと面談して、いっしょにがんばりましょうね!と顔を合わせて話せたのはすごく良いことだったと思っています。
 実際その後、エージェントが紹介してくれる選考はあまりうまく進まず、でもほかの転職サイトを通して自分で進めていた選考の相談にのってもらったりしましたし、登録しておいて損はないと思います。


・その他
 その他、とざっくりの枠ですが、あとは企業のサイトから直接応募するとか、タウンワークなどの冊子経由で応募するとかですかね。
 前回の転職活動の際、企業のサイトから直接応募して内定をいただきました。直接応募でそこまでいったことがなかったのでかなり驚いた経験です。ただ給与があまりに安すぎて結局お断りしてしまったのですが、わりと穴場なのかもな、と思うので大手ではなく中小企業は狙い目なのかもしれません。確証はないですが。


 転職活動自体しんどいのに、本当にひどい企業もありますよね。書類選考のうえの面接ですと言いながら書類はじめて読みますという態度、こっちの交通費と時間もとっているという意識のない面接官。自分がばりばりに働いててスキルがあってだったらそんな面接にならなかったのかなと思ったこともありますが、そもそもそういう企業はこちらから断ったほうがいいです。むしろわかりやすくて判断がしやすいというメリットがあります。互いに良いところばかり言いがちになる面接は、限られた時間でどれだけ企業の情報をしぼりとれるかという駆け引きでもあるからです。わたしは職場の雰囲気(わいわいしているのか、しんとしているのか)と残業時間については確認するよう努めました。あと雇用条件をきちんと先方から提示してくれる会社は信用できるなとか。

 いまは転職市場が潤っているといいます。たしかにそれは昨年冬に転職活動している際に感じました。わたしは本当に目立ったスキルがないし、転職回数も多いし、だというのに前回の活動時は1つ内々定、2つ内定をいただき、最終面接まで何社か進めました。いま選んだ会社は仕事内容がけっこうきついし残業が増えたしそれで今日そろそろ休みたい…と休んだけれど、前の会社にとどまらず転職してよかったとは思っています。いまのところは。
 自分が書きとめておきたいからという気持ちで書きましたが、だれかの就職活動の参考にすこしでもなれたらそれは
それでうれしいです。

 最後に、これまでの経験からいっても、自分がいつまでもあたりまえに働けるという確信はないので、今日みたいにたまには休みつつ仕事していけたらなあと思います。
 だからみんなも働きすぎずたまには休みましょう。人生長いから。

 

ブルックリン(私たちは故郷を選択する)

 

ブルックリン(原題:Brooklyn)2015年・ アイルランド・イギリス・カナダ合作映画(日本公開・2016年7月1日)

(TOHOシネマズ川崎・2D字幕・2016年7月16日鑑賞)

 


『ブルックリン』予告


Twitterのふぉろわさんにおすすめされたのをきっかけに見てきました。アカデミー賞見ているときに「何でごくふっつーのラブストー リーぽいのが入ってるんだろ…」と思っていたこの作品ですが、そして確かにラブストーリーでもあったんですが、最初に抱いたそうい う印象とぜんぜんちがった本当にすみませんでした。めっちゃ土下座。
1950年代、アイルランドからアメリカへ移住した女性の物語。アイルランドとアメリカ、ふたつの故郷を持つことになった彼女の選択の 話。
シアーシャ・ローナンといえば私には永遠のトラウマである「つぐない」のイメージがつよすぎて彼女を見るたびに「つぐない」思い出 してしんどくなるということがあるんですが(「つぐない」自体は本当にすばらしい映画)つまりそれほど印象深く良い女優さんなんで すよね。めちゃくちゃ共感させる演技してくる。今回のパフォーマンス特に天才的だった。


!ネタバレあり!


最初20分ぐらいもはや泣きっぱなしだったし、ラスト付近になると嗚咽寸前になるくらい号泣していたので本当に苦しかった…映画見て もぜんぜん泣かなかったのに今年に入ってめちゃくちゃ泣いているから年々涙もろくなるっていうのは本当のことだったんだな。信じて いなかった。真実でした。

パンフのインタビューでもあったけれどトニーとジムはそれぞれの国の良さ、エイリシュがその場所での人生を選択する価値があると思わせるための存在として描かれています。
アイルランドを出たエイリシュはホームシックに落ち込み仕事もままならず、新しい土地になじめず家族からの手紙をずっと握りしめている状態。学校に通い出して良い方向に変化するかも、というところで素晴らしい出会いに恵まれ、彼女のアメリカでの暮らしは好転していく。
その出会いとはトニーとの出会いで、エイリシュの決定的な転機となる。トニーという青年はもう信じられないくらい良い人間。男として、なによりも人間として素敵なひと。エイリシュが彼と出会って見違えるようになったように、トニーも彼女と出会ったことにとてもよろこび心から大切にしている。これはアイルランド人のエイリシュとイタリア人のトニーがおなじアメリカという国で出会い、アメリカ人となる物語でもあるんですね。

そんなふうに勉強も仕事も人間関係もうまくいっているなかで、家族の訃報を知らされます。そこでアイルランドに一度帰ることを決め、この国を出るときにはなかった仕事や素敵な出会いに恵まれることになる。
人生とは本当に皮肉だとまざまざと感じます。姉が亡くなったことにより姉が就いていた仕事を引き継ぎ、そこで評価をされ、アメリカでの生活で見違えるように美しく洗練された女性となった魅力的なエイリシュはジムと惹かれあう。ジムはトニーとはまったくちがう人物だけれどエイリシュと人生を築いていけるひとだと感じさせてくれる。ドーナル・グリーソンは毎回毎回、本当に良い仕事をするね…

アイルランドに帰る前にひっそりと結婚していたこと、アイルランドの閉塞感をまざまざと突きつけられたこと、おおきくはそのふたつにより彼女は最終的にはトニーのもと、つまりブルックリンへ帰ります。このブルックリンに帰るときの船での会話がまた素晴らしい。オープニング見ていれば予想のつく流れといえば流れなんですが、私はもう最後の母親との会話からポスターになっていたラストシーンまで号泣してて息も絶え絶えでした…郷愁を抱いてはいるけれど、最初にアイルランドを出たときに抱いていた郷愁とはまるで中身のちがう複雑な感情があるということを、シアーシャ・ローナンが本当に見事に演じている。1950年代というと通信手段が手紙しかなくて、すぐに帰ることもできない。姉の葬式には結局まにあわなかったわけで、唯一の家族となった母とももう二度と会えないという覚悟を感じます。

これは田舎を出て都会に生きる女性の成功物語でもなく「男を選ぶ」映画でもなく、誰もがいつかは経験する「故郷を選ぶ」映画なんですね。トニーとジムが非常に明快な選択の対象として描かれているんですが、ふたりはそれぞれの国でエイリシュがどう生きていくかの象徴です。アメリカ、ブルックリンでトニーと生きていくのならトニーたちとともに会社をつくり、そこで仕事と家族を築いていくことになる。アイルランドでジムと生きていくのなら老いた母のそばにいながら慣れ親しんだ友人とも過ごせて、さらにジムとはいつか世界を見てまわれるのかもしれないとも感じさせる。
どちらがただしいもまちがっているもないんですが、ブルックリンを選ぶ決断にどうしようもなく納得してしまうし、でもどこかにある自分が生まれ育った故郷を振り返る気持ちも捨てきれない。それはきっと捨てなくていいことで、最後にブルックリンに「帰る」ことで本当の意味でブルックリンがもうひとつの故郷になった。

ポスターのチョイスは本当に素晴らしかったと思います。エンドロールで「BROOKLYN」と出たときになぜだかまた泣けた。これ以上ふさわしいタイトルはない。

 

 

 

帰ってきたヒトラー(帰ってきてしまった)


映画『帰ってきたヒトラー』予告編

 

帰ってきたヒトラー(原題: Er ist wieder da)2015年・ドイツ映画(日本公開・2016年6月17日)

(TOHOシネマズ上大岡・2D字幕・2016年7月2日鑑賞)

ジョブズの感想を書いてから私生活がばたばたしておりまったく更新できておりませんでした。
それでも映画は見ていましたつまりサボっていました。2016年の上半期も終了したことだし心機一転でまた書こうと思います。
がんばるぞ!
(の第1歩として台湾旅行行ったときのことなどあっぷしてみました)
さて、昨日は話題作を見てきました。邦題のとおり、現代にタイムスリップしてきたアドルフ・ヒトラーの話。


!ネタバレあり!


完全に語彙力が失われている感想なんですが本当にすさまじかったです。
いやぁすごかった…すごい…すごいもんつくるな。すげえなドイツ…と震えたし、エンドタイトル入って1曲目ながれた瞬間に泣いた。恐怖で。
前評判どおりコメディで超笑えるけれど最後は真顔になる映画でした。見てよかった。

 

【「モノマネ芸人なのか本物なのか」よりも】

ストーリーも演出も派手さはなく地味で、わりと淡々と進んでいくなかでたまにドラマが動く感じ。モノマネ芸人だと思われているヒトラーが人気者になったり失脚したりまた返り咲いたりして、多くの市民はそんなヒトラーに笑い、でも中指を立てたり嫌悪感をあらわにしたりする市民ももちろんいる。でも映画見た印象的には圧倒的に前者が多数派と思えました。実際に映画は、ヒトラーが本物だと気づいた唯一の男は精神病棟に入れられて、ヒトラーは超人気者のまま終わる。
しかし正直、このときにヒトラーが本物とみんなに伝わってももはや遅い気がします。そもそもこの物語じたい「モノマネ芸人なのか本物なのか」はどちらかというと物語を展開させるためのテーマのひとつではあり主題ではなく、「ヒトラー(という人物とヒトラーの論)に対してどういう反応を示しどんな選択をしていくのか」が主題で、さらに皮肉なことにその主題は結果的に市民たちが無意識に黙殺している、というのがこの映画。
もちろんヒトラーを本物とするにはあまりにファンタジーすぎるので市民の反応はあたりまえといえばあたりまえなんですが、モノマネ芸人だろうと本物だろうとヒトラーがしゃべっていることに共感を示すのも彼を支援するのも、それは結局「ヒトラーを選択する」結末に至っていることに変わりはないわけなんですね。現代に帰ってきたヒトラーはおそろしいほどに当時と変わっていないのだから。
ただこれを、市民が愚かだとかヒトラーが悪いとかいうふうに一刀両断できないところが、この映画の真髄であり魅力であり、恐ろしいところだと思いました。

 

ヒトラーに惹かれるという恐怖体験】

映画内にあるメッセージや撮影方法のすごさなど語り出すときりがないんですが、この映画に対する感想でいちばんに浮かぶのは、恐怖体験だった、ということ。
私はヒトラーについて0から100まで知っているわけじゃなく、基本的情報(画家を目指していたとか、演説の天才だったとか、ユダヤ迫害とか)を知ってるかなぐらいです。そして本気で誤解されたくないので記載しますが私は決してヒトラーやその思想の支援者ではないです。本当に本当に。
しかし実際に映画で現代のドイツに生きるアドルフ・ヒトラーを見て、彼が魅力的だと感じた自分がものすごく怖かったし、そういう意味でめちゃくちゃなまなましい恐怖体験でした。彼の立ち居振る舞いや話し方・内容、どれもすべてに賛同できなくとも惹かれるところがたしかにある、そのこと自体がこわい。
まさにこの映画でヒトラーが最後に「よいこともあっただろう」と告げましたが、そのことを2時間体感していた私には図星であり、否定したくともできない事実におののく。歴史に残っているヒトラーの所業を考えればたとえよいことがいくらあっても許されないだろうとずっと思っていたし思うのに、現代のドイツの問題と国民に向き合っていく姿を完全に否定できない気がしてくる。
ヒトラーを選択した」という歴史上の事実はドイツ人にとってものすごく重い真実だろうなと思うんですが、この映画ではふたたび「ヒトラーを選択する」可能性の恐怖をまざまざと感じます。歴史を知っている私たちはヒトラーの行いをたしかに間違っているとわかっているはずなのに、なぜ彼を選ぶ可能性をゼロにしきれないのか。答を突き詰めて考えることはまた恐ろしい。知識を得て、問題に向き合い、行動する、それは映画でヒトラーがしていることだけれど、扇動されず私たちが国をよくするためにやらなければならないことである。
人間は歴史から学ぶと信じたいけれど、「国民の総意だった」という言葉の重みにおしつぶされそうだからこそ、おなじあやまちを繰り返してはならないと切実に感じました。この恐怖こそが悲劇の繰り返しをふせいでいくと信じたい。

 

【とにかく一見の価値ぜったいにあり】

もろもろ述べましたがとにかく今こそ見てほしい映画でした。
ドイツでの公開は昨年で日本公開は今年だったわけだけれど、イギリスのEU離脱ニュースもあってものすごくタイムリーな公開となりました。
ドイツ国民はもっともっとリアルに感じるものやいろいろ筆舌に尽くしがたいものがあるのではないだろうかと思います。原作はベストセラーとなったそうだし、私も読んでみたい。

 

 

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

帰ってきたヒトラー 上 (河出文庫 ウ 7-1)

 

 

 

突発台湾旅行(2016.5.28~2016.5.29)

XMENアポカリプス見に突発1泊で台湾行ったよ、を一部微修正しつつぷらいべったーより再掲します。映画のネタバレはありません。

 

【突然決めたながれ】

レポほど立派なものは書けないので自分の覚え書きみたいな感じですが、台湾にまでXMENアポカリプス見に行ったよレポもどき。
新情報や新しい予告出るたびに疲れて、突発的に行くことにしました。友だちを巻き込みました…本当にありがとう…

土日の1泊旅行でしたがそれでもかなり弾丸に近いスケジュールでした。
というのも、まず行く?どうする?と会議したのが5月の22日。つまり出発のほぼ1週間前。
しかしさすがにチケットが無く、あっても早朝や深夜の時間帯で現実的にきびしいね…とあきらめかけていたときに、キャンセルが出たのか?というほど唐突にあらわれたもっとも現実的な航空券+ホテルセットがDeNAトラベルに登場し、1晩悩んだ後に結局とりました。それが23日夜。
そのとれたセットが、成田空港⇔桃園国際空港で、14時ごろにあちらに着いて、15時ごろにあちらを出発するスケジュール。24時間はあるから、なんとか映画見られるだろう!!とポチったのでした。

前提として、ふたりとも台湾ははじめてで、中国語も英語もできないマンです。私は海外旅行行くのが10なん年前の修学旅行ぶりという自分でチケットとったのはじめてなレベル。しかし友だちは海外旅行経験があるのでかなり助けられました!本当に感謝…

 

【事前の準備】

友だちとは成田で待ち合わせることを決め、すかいぷで会議しつつ各自準備を進めました。
私はググったら出てくる台湾旅行レポとか、同じようにアポカリプス見に行った方の記事などを読みつつ、参考にできそうなURLはエバーノートに入れ、あとは台湾に行った友だちが何人かいたので聞きまわりました。

「今週台湾行くこと決めたから生き延びる術とか教えてくれ」
「今週かよ」
「昨日決めた」
「昨日かよ」

とつっこまれながら教えてくれてありがとう。

●やはりWifiルーターは必須なのではと思い聞いたところ、かりたほうがいいよと言われたのでルーターのレンタルは決定。
●冊子がひとつ欲しかったので「地球の歩き方」の最新を図書館で借りる(ふつうに買ってもいいと思いますが金欠なので)。
●ウェットティッシュと汗ふきシートと傘。これらは暑く雨の時期でもあった台湾では本当に必須だった。
●ほか着替えとか化粧品とか筆記用具とか旅行に必要そうなものと、最終的にパスポートと金があればええじゃろと終了。

iPhoneにアプリをいくつか入れましたが、今回いちばん役立ったのは地下鉄(MRT)乗り換え案内。駅名を手入力じゃなくクリックで入力できます。
■お金をとっさに知りたいひとはドル⇔日本円の変換のページを開いておくといいかも。Yahooとかにあります。
■Googlemapは世界共通の神アプリ。
■読み方を知りたいときは随時調べてましたが、「指さし会話帳」というアプリに基本的な挨拶とかあったからいいかも。

●そして物凄くよかったのが、友だちが旅行のときにやっていたという「共通財布」の作成。お互いに1万円ずつとか決めて出して両替して、共通財布に入れて、交通費やいっしょの食事などはぜんぶそこから出すというもの。いちいち割り勘とかしなくて済んでめっちゃ便利でしたありがとう!

あとは今回タイガーエア台湾という安いLCCで、預け荷物すると料金が別途とられるものだったので荷物を最小限にすることを心がけました。
リュックサックは後ろが見られず怖いので、チャックが閉まり斜めにかけて荷物が自分の視界に入れられるバッグひとつに詰め込みました。ぱんぱんになった。

 

【そして旅立つ】▽飛行機の気流やばい▽

友だちの言うとおり、2時間半前に空港に着くことを行きも帰りも心がけていました。けっこう余裕をもっているスケジュールですが、結局空港内で何か食べたりお土産買ったり荷物整理したりしていたので、心配性な我々にはちょうどよかったです。
それと事前にネットで予約してもらっていたWifiルーターは空港で受け取ることにしていたので、受け取りました。

今回、液体物をジップロックに入れる・しかもちいさなジップロック(規定サイズがあった)じゃないとだめっていうのを行きの空港で聞いて衝撃を受けたのであった。ちゃんと調べようね…そして年々きびしくなっているんだね…
友だちにアドバイスを受けたりチェックインカウンターで聞いたりしたおかげで、荷物検査はスムーズでした。

トイレをこまめに済ませつつ飛行機に乗り、LCCは映画とか見れないんか…つか狭い…と言いながら台湾へ。
行きの飛行機で予定を決めたりおしゃべりしたり。
台湾と日本の旅は気流が乱れることが多いと今回友だちに聞いたのですが本当にそうだった!!びびりには怖すぎた!!
ちなみに機内食を注文して食べました。美味しかった。

 

【桃園国際空港から台北へ】▽リムジンバスは時間かかる▽

地球の歩き方」と友だちが空港で買った「るるぶ」等を見つつ台湾を予習し、桃園国際空港に着く。
着いたらそっこーでWifiをつなぐ私。iPhoneがないと生きていけない。
飛行場からバスで空港へ行き、最初にあった両替場で両替をし、入国審査。かなり並んでたけど進みはスムーズでした。
すべて始終無言で顔写真を撮られ指紋を取られ…アポカリプスがどんなにショッキングでも犯罪は犯さないようにしようとここで誓う。
映画館の目星はある程度つけていたのですが、スケジュールが2日前でも出ていなかったところが多かったので、この並んでいるときに調べてスクショをとりました。

リムジンバスで移動がいちばんおすすめらしかったので(増設予定の地下鉄がまだのびていなかった…)、バス乗り場へダッシュ…する前に通りかかったサブウェイで飲み物を買う。
というのも、着いた瞬間に暑さにやられたからです。雨という予報だったんですが実際には熱中症気味になるほど2日間晴れてて暑かった。1日目の夜にちょっと雨に降られたけどそれくらい。雨は嫌だけど、晴れにも死にました。シャツ1枚とジーパンでも暑すぎた30度超えと物凄い湿気。

今回の旅で学んだのは、とりあえず「紙に書く」ことでした。
ホテルに行きたいならホテルの名前を紙に書いて見せる、とか。私はiPhoneで調べたりマップ出したりして、友だちが紙でのプリントや書くことをやってくれた…ありがとう本当に…
バス乗り場に向かい、時刻表をてんやわんやしながら見て、10分後に乗りたいバスが出る!となり、ホテルの名前が書かれた紙をチケット売り場のひとに見せる。このバスがホテルに行くかどうかをあらためて確認したかったので。買った後はちょうど後ろが乗り場だったから指差して「あれでいい!?」と聞く(日本語)。おばさん笑顔で対応してくれた。感謝。
聞いていたとおり、屋内は基本冷房がんがんでめっちゃ寒かったです。上着いると聞いたので持っていたのですが本当に必要だった。
バスにはぶじに乗れたんですが、これがかなりのくせものだった…おりる場所になったときに我々はわかるのか?という不安はもちろんだけど、バス停じゃないところでも降りたいと示せば降りられるみたいで、そして台湾だから、台北だからなのかな?車の移動がめっちゃ時間かかる。一方通行が多いからと聞いたけどそれのためなのかな。ガイドブックやホテルのホームページに書かれていた時間より30分くらいオーバーして着きました。

 

【ホテルから映画館へ、からホテルへ】▽とにかく紙に書こう▽

泊まったホテルは地下鉄の駅が近く、またなかなか広くて素敵でダブルベッドがめっちゃ大きくて興奮しながら、チェックインして荷物整理したらそっこー西門の映画館に行くことを決定。
本当はでっかいIMAXがあると聞いたミラマーか台北101にある映画館に行こうとしていたんですが、前者はIMAXでのアポカリがもはや終了しており、後者は地下鉄で行くには遠かった(といっても30分)。

今回は本当に時間がかつかつで、おまけにアポカリが150分もあり、できたら2回見たいとか言っていたのに、ホテルに着いたのは17時近くで…映画のスケジュール的にもあまり選べない状況でした。
翌日もお昼には空港にいたいとなると、早朝の時間はないので(深夜はいくらでもあった)2日目は映画を見る時間がないから、とにかく命がけになっていた我々。

西門へは地下鉄で10分でした。24時間乗車券というのを買ったんですがこれが便利!1日乗車券だとその日の終電までになるけど、24時間だとその名のとおりまるっと24時間使える。パスモみたいにピッとやるだけなのでよかった!
これも友だちが乗車券の種類が書かれたページを印刷してくれた紙を指さして、窓口で買う。
地下鉄はすごく整備されてたし、時間も遅れたししなかったのでありがたかった。

西門から映画館[國賓大戲院]まではわちゃわちゃいろんな店がある通り(渋谷みたいな感じ?道は狭い)を歩いて、ぜぇぜぇしながら映画館に着く。
チケットを買うのも紙に書くといいと聞いたので書きました。
タイトルと時間と人数、あとポップコーンとドリンク買うか聞かれるのでそれがいるかいらないかを書くといいみたいです。
しかし我々は時間がちょっと不明だったので(完売してるかもとか、近い時間のあるけどおっきいスクリーンはどっちなのかとか)時間は書かずに行き、着いてから決めてiPhoneの画面でこの時間のくれ!!と示しても「なるほどわからん」と肩をすくめられました。やはり紙に書くのがいちばん確実。
無事に買えたときはふたりでふるえたね…最初に見る予定だった10分後にはじまるものより、1時間後のドルビーアトモスの劇場のほうがスクリーンが圧倒的にでかかったのでそちらにしました。ので、タピオカ飲んでラーメン食べました。
余談ですが私と友だちは美味しいもの食べることがしぬほど好きなのに、今回は時間がない&暑さにやられてぜんぜん食べられなかったのでリベンジしたいです。今回の旅でいちばん美味しかったのはタピオカミルクティーだった。

ドルビーアトモスのスクリーンは800人ぐらい入るスクリーンで、しぬほどでかかった。あれ新宿のIMAXくらいあるんじゃないかな…そして日本でドルビーアトモスの映画見たとき特にすごいとは思わなかったんですが、台湾のドルビーアトモスめちゃくちゃ音がクリアででも迫力あってすっっっごいよかった!!!!!!毎週来たい!!!!!!
終わったのが22時前で、もう移動もできないねどうしようねと言って結局その後22時過ぎにはじまるおんなじドルビーアトモスのを見ました。それと聞いてたとおり、エンドロール入ったらすぐに明るくなった。で、エンドロール後の映像のときまた暗くなった。親切設計!

2回目見た後は当然終電はなかったので、エンドロール中にスタッフのひとに「タクシーを呼んでください」を翻訳した文章を見せました。
タクシーは流しのタクシーはあぶないとか、綺麗なタクシーをさがすのがいいとか聞いて、結局レストランやホテルのひとに呼んでもらうのが確実ということでした。
これは本当にそのとおりだなと思いました。たまたま超親切なスタッフさん(若い男のひと)にあたったのかもしれないですが、タクシーを呼んでくれた後にタクシーの番号と到着時間を紙に書いてくれただけでなく、そこまで案内してくれてタクシーを見つけてくれて、ホテルの名前を書いた紙を運転手さんに見せてくれて、ドアを開けてお見送りまでしてくれた…惚れるわ。
ホテルに帰り、ホテルの1階にあるセブンイレブンで飲み物とか買って、語ったりなんかしたりして寝ました。

 

【ホテルから地下鉄でちょっとぶらぶら】▽熱中症に気をつけよう▽

次の日はチェックアウトして、台北101にある映画館でアポカリプスの展示があると聞いたので向かいました。
この移動がけっこう体力やられました。あんまり寝てなかったのと荷物をずっと持っていたのもあると思うんですが、気温の高さと湿気にやられ、熱中症みたいになった…展示見た後に朝食にと入ったカフェのごはん食べきれずにいっしょに頼んだレモン水のレモンかじってちょっと復活した。
私たちの泊まったホテルの最寄り駅から台北101まで地下鉄の路線乗り換えがあったんですが、乗り換えが東京駅のJRから京葉線かよってぐらい遠かった。台北101から歩いて10分くらいでという映画館[信義威秀影城]に到着。ここにでっかいアポカリプスとかいました。
商業施設に入ってるシネコンという感じですごく落ち着いた…今度はここでも見たいなぁ。

駅までの帰り道にも商業施設があって、友だちがシャツを買うためにFoever21に寄りました。だいたい11時オープンなところが多いみたいでしたが、こことGAPはなぜか開いていた。
タコトでレジはどこ…とか、タグを切って…とかジェスチャーで示す。みんなわかってくれてありがとう…総じてジェスチャーと紙に書いたものと単語と、サンキューとシェイシェイでなんとかなった旅だった…

 

【空港に戻り帰国】

帰りはリムジンバスよりも時間が確実なタクシーでもう行ってしまおう!と台北駅(台北メインステーションってところ)に地下鉄で移動した後にタクシーで。やはりバスに比べるとめっちゃ高くなりますが、時間はバスよりかからない、というかスムーズ。このときはタクシーを呼ばす、ホテルの前に止まってるタクシーに乗りました。台北駅はターミナルという感じで人も多くタクシー乗り場への案内もあったので、まぁ大丈夫だと。

空港にはやめに着き、荷物整理したりチェックインしたりの後にやっと台湾らしいものを食べました。台湾ソーセージがもち米に挟まってる、形状的にはホットドッグぽいものとチキンとタピオカミルクティー。ぜんぶ美味しかった…本当に次はもっと食べたい…
ちなみに行きはひっかからなかった眉毛ハサミが帰りはひっかかったので捨てました。100円で数年前に買ったわりにずっと切れ味よくて使っていたものだった…さらばだ…

帰りも気流の乱れにおびえながらも、なんとか到着。

目的だった映画は2回見られたし、展示も見られたし、おおきく傷つくことも傷つけられることもなく、っていうかだいたいみんなにやさしくしてもらい、楽しい旅となりました。
友だちも本当にありがとう!
突然決めたし言葉もわかんないし海外だしはじめてだらけだし大丈夫かよとなりながらもがんばって何とかなったし、映画も英語音声の中国語字幕でも全体はわかったし、本当によかった…
マジで突発だったのでチケットを選べなかったけど、次は羽田空港松山空港がいいなと思いました。松山空港は台北まで車で5分とかの都心にある空港のようだったので…また行きたいです。行く気まんまん。

 

時間がかつかつで写真あんまり撮れなかったので文字オンリーのレポなのかなんなのかになりましたが、最後まで読んでくださった方いらっしゃいましたらありがとうございました!

 

スティーブ・ジョブズ(について追加記事・GQインタビューを読みました)

 

GQを読みました。

(いろんな事情と気持ちにより記載削除)

 

 

2月頭に友人と京都旅行してきたのですが、その帰りにスーツケースごろごろしながら有隣堂に買いに行った思い出。ジョブズを見てからインタビュー読もうと思い置いていました。「スティーブ・ジョブズ」はパンフも文字の量多くてハッピーで、GQのインタビュー内容もおもしろかった。そのためGQの内容と映画のネタバレ感想を追記で置いておきます。

 

!ネタバレあり!

 

にしてもファスベンダーは本当に働きづめですね。倒れんか心配になる(勝手に)。GQのインタビュー「新作撮り終えてサーフィンで遊んでたらジョブズの話が来て休暇がおわった」って…休んでね(勝手に)。先の感想記事でもふれたこと、やっぱり本人やまわりも思ったよねぇということがGQインタビューに。「クリスチャン・ベールのほうがジョブズに似ている、ファスベンダーは似ていない」というあれです。しかしこの記事で謳われているようにファスベンダーは「最高のパフォーマンス」をしておりました。ありがたいありがたい。この記事では、

「伝記映画では、たいてい物語よりも物まねの出来不出来を重視する。」

とファスベンダーが言っていて、しかしファスベンダーも監督ダニー・ボイルもそういうことはしないとなったと。それ読んですとーんと納得しました。だからなのかぁ。だからこの映画は成功しているのだ。先の感想記事でもふれた、見る前の私の不安というのは「伝記映画」に対するものだったんですね。監督のカラーにしても、ファスベンダーが演じるということにしても。でもこのひとたちがつくろうとし、そしてつくったものは、往来の伝記映画ではなくまったく新しい伝記映画、っていうか伝記という言葉はもとよりふさわしくなかったんだな。私が多大なる勘違いをしておりました、失礼しました。ある伝説の人物をまったく新しい切り口から魅せていった映画で、ある意味ではファンタジー映画であり、ある意味では友情・家族映画であり、ある意味では会話劇という名のアクション映画である。GQでは脚本のアーロン・ソーキンについてもふれていて、彼は「伝記映画ではない」とはっきり言っていたんですね。

ソーシャルネットワークマーク・ザッカーバーグの人生を虚構としてかたちづくることを恐れなかった」

と評されており、たしかにあれを思い返すと物凄く納得するというか、さらなる高みにアーロン・ソーキンはステップアップしたのだなぁ。この映画がなぜこんなに魅力的で、きもちよく見られるのか。伝説の人物を過剰なまでに美化しているという印象もそこまでなく(まぁ美化はされているのだろうけれど)、どちらかというと伝説の人物がただのひとりの人間であることに過剰なまでに重きをおいているから。それでいてこの男が非凡であることもファスベンダーの演技ではっきりと理解できる。スティーブ・ジョブズという男の中核や変化を示すにあたり、よけいなものを削ぎ落とした映画であるんですね。はじめに見たときに、なぜプレゼンテーションの場面をやらないんだ?と思ったんですよね。ファスベンダーの演技でどう魅せるのか見てみたかったので、最後の最後でやるかなぁと思ったらやらなくて、あれ!?と思ったんですが、重要かつこの映画のテーマはそこではなくて舞台に立ち称賛を浴びる男の「そこに至るまでの話」、つまり世間が見られる舞台上のスティーブ・ジョブズという「伝説の人物」ではなく舞台裏の「ただのひとりの人間」であると。いや本当にいまさらですまない。言い忘れましたが私は咀嚼能力がかなり劣っていると思うのでこういうことに気づくのが遅いです。たしかに「ソーシャルネットワーク」のラストもそうだったわ。ただのひとりの人間なんだなぁと思ったわ。マジですまんかった。

しかし「出来損ない」でも友人や娘にまともな対応ができなくとも、圧倒的なカリスマがあることがひたすら伝わってくるんだよなぁ。この映画のジョブズはかなり等身大で、見ているひとによってはむかついたりいらいらしたりするのかなぁと思ったんですが私はぜんぜんしなかったというか、むしろいとしくてたまらなかったです。ウォズが「友」であることはこんなことを言っても何をしても彼には変わらないし、スカリーやジョアンナの前でふと見せる本音やよわさは彼の真実であるし、娘へのやりきれないもてあますような愛情の示しかたは娘の成長とともに変化していくし、そのすべて矛盾したり正気じゃなかったり最低であったりしてもひっくるめていとしいと思ってしまった。この映画の主人公についてはそう思いました。

さて、最後に話が変わりますが、今年もアカデミー賞の季節がやってまいりました。毎年アカデミー賞をわくわく見ているのですが(アカデミー賞がすべてではないし最高峰の賞であるとは思っていないけれど、楽しい楽しいお祭りであるし、賞をもらいよろこんでいるひとたちを見ることがだいすきなのです)ファスベンダーがノミネートされていますね。ケイト・ウィンスレットも。そのふたつだけだったかな。ファスベンダーが主演男優賞とったらそれはそれで超うれしいんですが、まぁ誰がとってもうれしいよ。しかしノミネート納得のすばらしい演技でありました。演技だいうことを忘れるパフォーマンスは好き嫌いを超越して絶対的に胸に残りますね。発表を楽しみに待とう。

 

 

スティーブ・ジョブズ(超まちにまったマイケル・ファスベンダー)


映画『スティーブ・ジョブズ』

 

スティーブ・ジョブズ(原題: Steve Jobs)2015年・アメリカ映画(日本公開・2016年2月12日)

(TOHOシネマズ六本木・2D字幕・2016年2月12日鑑賞→TOHOシネマズ新宿・2D字幕・2016年2月12日鑑賞)

 

はじめに申し上げます。もはや告解の勢いで申し上げますと、わたくしマイケル・ファスベンダーの大ファンであります。ですのでファンというフィルターがかかっていることは否定しません。でもファンであろうとつまんない映画はつまんないし、いまいちな役だなと思うものもあります。ひとりの俳優ファン以前に映画好きでありますために。まぁ結論からいうとこの映画は最高でしたが!マイケル・ファスベンダーという存在に感謝!

超簡潔なあらすじ。誰もが名前だけでも聞いたことがあるであろうスティーブ・ジョブズの物語です。アップル社のひとです(ざっくり)。映画はジョブズの3つの時代をピックアップしています。1984年、1988年、1998年。彼の絶賛されるプレゼンテーション、その舞台裏で何が起きていたのかという話。

監督はダニー・ボイル。「トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」などをつくっているひとです。そしてこの映画は脚本が話題のひとつであるので脚本家についてもふれると、脚本家はアーロン・ソーキン。「ソーシャルネットワーク」でアカデミー賞受賞したひとですね。「オデッセイ」の記事でもちょっとふれた「ニュースルーム」というドラマも全話脚本書いています。全話…のはず。私のような素人でもこの脚本は何なんだ!?と驚ける非常にわかりやすい凄さがこのひとにはあります。まぁとにかく情報量がすごい。この「スティーブ・ジョブズ」「ソーシャルネットワーク」「ニュースルーム」に共通していえるのは出演者がずーーーっと喋っていること。マジで絶え間なく誰かが喋っている。そして喋っている内容も濃い、めっちゃクレバー。このどれか1本見るだけでもわかると思います。「スティーブ・ジョブズ」の脚本は200ページぐらいあったそうです。ほかの脚本がどのくらいのページ数かってことは知らないですがこれは尋常じゃないぶあつさなんだなって察せられる。私は「ソーシャルネットワーク」すごく好きで、はじめて見たときはほかにない情報量の多さに圧倒されました。そしてこの映画がつくられると聞いたときのことです。アーロン・ソーキンマーク・ザッカーバーグFacebook創始者)に続きスティーブ・ジョブズの話書くのか!めっちゃ楽しみ!とわくわくしたんですがダニー・ボイルがメガホンとるときいてOh…?となりました!いまだから言う!先の述べた監督の2つの作品はだいすきなんですが、「トランス」とか正直残念極まりなかったので個人的にはむらがある監督であったし、史実を撮るひとというイメージがなかったんですね。エンタメ撮らせると映像と音楽が独特で見ているあいだ心地よい陶酔感に浸れるけれども。さらにさらにクリスチャン・ベールジョブズを演じると聞いていたら直前で降板してファスベンダーになったと聞いて、「もうだめかもしれない…」と思いました!いまだから言う!!(2度目)ファスベンダーがよくないんじゃなくて、クリスチャン・ベールは外見をかなり変貌させていくひとなので、実在の人物演らせるのはいいだろうなぁと思ったんです。ジョブズはまだ記憶に新しいひとで、顔もみんな記憶に濃いだろうし…ファスベンダーは外見を変えてくのは難しい気がするし…美しいし…(ファンの戯言)などと思っていたのでした。しかし!!結果としては!!映画もファスベンダーも最高でした!!!!!!どれくらい最高かって六本木で見て知り合いと解散した後に新宿で友だちと合流して2度目見たぐらいに最高でした。アホなのか。そしてまた前振り長くなった。

 

!ネタバレあり!

 

私はiPhoneiPodユーザーですがジョブズについてはほとんど知りません。アップルを創ったひとってことと、亡くなられたときにプレゼンテーションの動画見て英語がわからなくても非常にわかりやすいと思ったことぐらいです。ほかは断片的にガレージではじめたとかビル・ゲイツとの関係とか知っている程度。以前つくられたジョブズの映画も見ていないのでかなりまっさらな状態で見ました。そういう状態の私が見ても非常にわかりやすくまとめられていたスティーブ・ジョブズというひとの映画だったと思います。

そういうわけでどれだけ脚色されているのかも判断できないので、ひとつの映画作品として見たときにとてもおもしろい映画だと思いました。伝記映画だとかまえているといい意味で期待を裏切られる。ダニー・ボイルが得意(だと思っている)のエンタメ作品に仕上がっていました。まず物凄く的を絞っているので、混乱したり冗長に感じたりすることがなかった。2時間2分あるらしいけど90分ぐらいに思えたよすげえな。3つの時代のプレゼンテーション、その本番前の舞台裏での出来事。ジョブズと親しいひとたちとの関係性をひたすら会話劇で繰り広げていく。うーんおもしろかった。疑ってすまんかったダニー・ボイル。会話劇なんですがダニー・ボイルらしい独特の音楽の使い方と映像演出で目と耳もまったく退屈しなかった。最近だと「セッション」が音楽映画というよりアクション映画、とありましたが、それを思い出した。パンフに似たようなことあったと思うんですが、会話劇というかアクションであり、非常に舞台的なつくりでした。場所もプレゼンテーションの会場と限られていたしね。というかなり、かなり厳密に限定されている物語でありながら飽きさせないのがすごい。脚本の濃密さと監督の独特さに俳優たちが命を吹き込んでいた。こういうのなかなか見られないと思うのでめっちゃ楽しかったです。ファスベンダー扮するジョブズが最初のシーンで「Fuck you!」って言うところで「あ、これめっちゃおもしろい映画だわ」と思った。最後の娘とのシーンだけ失速して情緒的すぎるように感じたけれど、物語の着地点としては気持ちよかったしこれしかなかったなぁとも感じます。

 で、ファスベンダーなんですけど。「プロメテウス」で知ってなんとなく好きだな~からの「悪の法則」で超ファンになったんですが、2時間ほぼ出ずっぱり・喋りっぱなし・死なない・泣かない・しんどい映画に出ていないファスベンダーってはじめてじゃない!?!?!?ともうそれだけでファンとしてはありがたいというか、つーか昨年は日本公開作が1本もなくて1年ぶりの映画館で見られるファスベンダーがこの「スティーブ・ジョブズ」って急性ファスベンダー中毒で死にます!!とアホなこと言いたくなるくらいには気が狂った。完全に正気を失った。本当に白状すると1度目はその多幸感が物凄くて話の7割理解していなかったと思う。2度目でやっと頭に入り込んできた。本当にすまん。でも理解できてなくてもおもしろかったというか見聞きしてるだけで心地よかった。あと何回か見に行きます。しかし彼の作品もだいたい見たと思うんですが、そしてそのたびに凄まじい俳優だなと思うんですが、今回もすごかった。私の超素人的観点から、「声を変えられる俳優は一線を画して異常なほどやばい」というざっくりした基準があります。ヒース・レジャー(「ダークナイト」)、フィリップ・シーモア・ホフマン(「カポーティ」)とかですね。なので、ジョブズが喋り出したときに声が普段やほかの作品のファスベンダーの声とぜんぜんちがって「あ、これすごい」と語彙力ゼロの感想を抱きました。あと映画見てて老メイクがいいと思ったことってほとんどないんだけど、第3幕のジョブズのメイクはすごく自然な感じでよかったな。見た目はやっぱ寄せられないよなぁと思ってたけれど第3幕はときどきリアルなジョブズに見えた。もちろん声を変え、喋り方・動き方・しぐさとかでスティーブ・ジョブズを演じきっていたと思いますが。

 めっちゃ長くなってきてるけどまだ脇のひとたちについて話したい。ケイト・ウィンスレット扮するジョアンナとセス・ローゲン扮するウォズがそれぞれちがったすばらしさがあってそこも語りたいんですが、さらにもうもうジェフ・ダニエルズ扮するジョン・スカリーが!!もう!!この2時間ちょいの映画で手に汗握る状態で見たいちばんのシーンは第2幕のジョブズvsスカリーの口論シーンでした。ジェフ・ダニエルズは「ニュースルーム」の主人公でアーロン・ソーキンの脚本を3シーズンにわたりさばいている御大です。さすがである。感情を爆発させて怒鳴りあうシーンってストレス感じること多いんだけど(たぶん感情移入できてないとき)アーロン・ソーキンの脚本でそういうことはぜんぜんない。このお気に入りシーンとかめっちゃ気持ちよかったからな。ファスベンダーのこういうキレてる演技がずっと見たかったんだ!!っていう気持ちもあり。「人生最悪の夜」の回想シーンの入り込み方はダニー・ボイルらしいセンスを感じるし、この回想シーンの入れ方は全体的によかったです。会話が細切れになるのにスピード感は失わない。第3幕の実父のシーンもおなじ手法でしたね。娘の前で見せるものとはまたちがう本音やウィークポイントをスカリーに見せるところがとてもすき。娘には「出来損ないだから親になれない」だったけどスカリーには「出来損ないでも親でいてほしい」なんだなぁと、その対比を感じました。

まだまだあるもののいったんやめる…また書きたくなったら別記事に書きます。最後になりますがアラン・チューリングのくだりに泣きかけました。なぜなら昨年「イミテーション・ゲーム」で大号泣したからである。アラン・チューリングについて私は何も知らなかったのであの映画を見られてすごくよかったし、いまこそみんなが見るべき物語であったと思いました。なので記者が写真を見て「誰?」と言ったアラン・チューリングの功績を称えるべきだと説明したジョブズのさりげないけれどたしかな敬愛が印象深かったです。

この映画の原作となった本も読んでみたいな。長々とおつきあいいただきありがとうございました!

 

 

 

 

 

 

 

 

クリムゾン・ピーク(うまれてはじめてホラーを映画館で見た)


『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ最新作!『クリムゾン・ピーク』予告編

 

クリムゾン・ピーク(原題: Crimson Peak)2015年・アメリカ・カナダ映画(日本公開・2016年1月8日)

(TOHOシネマズシャンテ・2D字幕・2016年2月4日鑑賞)

 

シャンテの地下にスクリーンあるの知らなかった。何で地下なんだよコエーよと文句を言いながら(ビビリ)見ました。年明けに「完全なるチェックメイト」をシャンテで見たときに予告見て最高に美しいけど最高に怖そう!!めっちゃ見たいけどめっちゃむり!!と言っていたのですが知り合いの方が見に行くというのでのっからせていただきました。

あらすじが説明しにくい。20世紀初頭(とパンフにあった)の話で、幼いころに母を亡くした女性が主人公です。彼女は母を亡くした後に母の幽霊に「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」と助言をもらっていました。その後成長した彼女は幽霊が登場する小説を書いて作家になることを目指しています。そんな最中にある魅力的な男性と出会い、互いに惹かれあうのですが、彼女の父は相手の男とその姉を怪しみ調査させ…みたいな感じです。

監督はギレルモ・デル・トロです。パシフィック・リムの監督です。私はパシフィック・リムしか見ていない、そしてめっちゃ白状するとまぁふつうにおもしろいなぁぐらいでした(期待値高く見てしまったのでもう1度見直したいとは思っている)。ただこの監督の「パンズ・ラビリンス」がけっこうえぐいという感想を聞いたのと、私はほんっっっとうにマジでホラーグロが一切だめなので、そっちの系統ぽい「クリムゾン・ピーク」はむりだろ予告の映像美すさまじいし好きな俳優さんばっかだし見たい気持ちはあるけどあかんだろ!!と避けてました。何人かに「こわくないよ大丈夫だよ」と言われたけれどホラー耐性あるひとにそんなん言われても信じられません。本気のこわがりナメないでほしい。WOWOWで見た「バイオハザード」がしぬほどトラウマになって夜ねむれなくて姉の部屋にもぐり込んだぐらいなんだからな。それでも評判よさげだし勇気を出して行きました。いっしょに行ってくれたTwitterのふぉろわさんに感謝です。

 

!以下ネタバレあり!

 

結論からいうとこわくないなんてことはなかった。ただ最後めっちゃ笑った。よって後味はこわくなかったのでOKです。でもこわくないなんてことはなかったよ(2度目)。昔ながらのホラー演出といっていいのかな、音でビビらせる演出に何度もビクッとなりましたし。幽霊もパッと見はへいきなんですけれどよくよく見るとグロい気がするし痛そうなシーンは目をそらして画面の下半分を見ていましたし。最後20分以外はホラーだと思います。

それでも劇場で見る価値はあったと思いました。何よりも映画美術の美しさがすさまじい。圧巻。ビジュアルブック超欲しい。まず出ているメインの俳優さんたちが美しすぎる。ミア・ワシコウスカ扮するイーディス、トム・ヒドルストン扮するトーマス、ジェシカ・チャステイン扮するルシール。その美しさがあの20世紀初頭の舞台にとてもとてもマッチするものなんですよね。姉弟の住まう屋敷に行くまで思ったより前振り長いなと思ったんですが、それまでのイーディスが暮らしてる屋敷や舞踏会や葬儀のシーンすべてが美しいから常に目がよろこんでた。いいなぁ映画の舞台美術めっちゃ楽しそうつくりたいってなる。それでもイーディスが嫁いでクリムゾン・ピークに着いたときはあまりの美しさに息を呑みました。老朽化している屋敷なんですがそのぼろさがよけいに美を際立たせていて、舞い降りてくる雪や風のつめたさすら綺麗で、どこを切り取っても絵になる。そんなところにイーディスとトーマスとルシールが住んでるって天国かよ。地獄だったけど。

語彙力なくて美しいしかいえないので最後20分の死闘に話をうつします。ここが本当に語りたいところである。最後のほうになってチャーリー・ハナム演じるアランが屋敷にやってくるんですけれどもーーーこっから最高。それまでビビりまくってたのに本当に身体の力が抜けた。っていうか笑った。ただ見終わって数日、いま、あらためてよくよく考えてもすごい映画だったなと思います。ストーリー展開の陳腐さとかは正直この映画のなかで創り上げられている美しさと俳優たちの生まれ持つ美しさでぜんぶチャラだと思えるほど最高峰の美だったので私はいいんですが、この映画の男性像と女性像が。マジですごかったな!とじわじわ思い返すほどにきています。昨年話題となった「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は性を超越したものでしたけれど、「クリムゾン・ピーク」は性の役割が逆転、というか何そればからしいって一笑に付している話であった。しみじみ。まぁ本当に性の役割とか本当ばからしいと思うんですけど。ボンドガールとかその名称いいかげんやめなよナメてんのか?って思うんですけど。ただこれって20世紀初頭の話であるし、未婚のイーディスが冒頭で女性たちにばかにされるシーンとか、書いた作品に女性が書くなら恋愛ものにってケチつけられるから筆跡で女性とわからないようにタイプ使うとか、そういうのが顕著にあります。そしてイーディスはまちがいなくそれに反抗し腹が立っている。これは物語上の伏線ではなくイーディスというキャラクターの伏線だったのだといまならわかる。イーディスはマジでめっちゃつよいんです。メンタルだけじゃない。つよい(物理)です。ルシールに殺されそうになってピンチ!なところにアランが来てくれるんですが、最終的にはイーディスがルシールを倒してアランを救うんですよ。アランははっきり言って何の役にも立ってないからな。あんた何しに来たの?だよ。トーマスとルシールの男女関係は、姉弟であるので男と女ってフィルターだけじゃ語りきれないと思うのですが、アランとイーディスについては実にはっきりと役割が逆転しておりました。アランについて表現すると、「主人公がピンチだということを遠隔で知り、これは助けに行かないととひとりでがんばって助けに行き、そうしたら敵に刺され(しかも敵にはちょっとたすけられている)敵と戦うこともないまま戦線離脱、最後には主人公に支えられ救われる」という感じでした。これひとむかし前のハリウッド映画のヒロインじゃん!!!!!!と衝撃を受けたよ。何の役にも立てないけどただ主人公が好きでがんばったの!っていうあれだよ。イーディスは足を骨折してしまってるって姫抱っこされているシーンとかあったはずなんですけれど、結局はアランが隠れているあいだに走って雪のなかでルシールと最後の対決をしスコップで殺るからね。そして私はルシールが走るたびにフワッ…とお洋服が舞うのが美しくて笑ってしまった。ジェシカ・チャステインだいすきです。

パンフの監督のインタビューで、「イーディスは現在、ルシールは時代遅れの観念を抱いている」というようなことが書いてあったんですが、つまりそういうことでした。最後のあのナタvsスコップは、過去vs現在だったということだったんですね。そしてスコップ、つまり現在が打ち勝ったと。そしてイーディスは未来に生きていくのだ。本当に性の超越とかじゃなくて完全に大勝利をおさめていたので逆転という表現を使ってしまいましたが、とにかくそういう意味でも映画のストーリー的にも最後のイーディスの勝利はきもちよかったです。トーマスが幽霊になって、イーディスにふれられて消えていく姿とか完全にヒロインじゃん。すげーよ監督。監督のことだいすきになりました。「パシフィック・リム」見直します!ありがとうございました!

 

ギレルモ・デル・トロ クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス

ギレルモ・デル・トロ クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス