ななこのブログ

服を着て映画を見てごはんを食べてときどき旅に出るなどを綴ります

スティーブ・ジョブズ(超まちにまったマイケル・ファスベンダー)


映画『スティーブ・ジョブズ』

 

スティーブ・ジョブズ(原題: Steve Jobs)2015年・アメリカ映画(日本公開・2016年2月12日)

(TOHOシネマズ六本木・2D字幕・2016年2月12日鑑賞→TOHOシネマズ新宿・2D字幕・2016年2月12日鑑賞)

 

はじめに申し上げます。もはや告解の勢いで申し上げますと、わたくしマイケル・ファスベンダーの大ファンであります。ですのでファンというフィルターがかかっていることは否定しません。でもファンであろうとつまんない映画はつまんないし、いまいちな役だなと思うものもあります。ひとりの俳優ファン以前に映画好きでありますために。まぁ結論からいうとこの映画は最高でしたが!マイケル・ファスベンダーという存在に感謝!

超簡潔なあらすじ。誰もが名前だけでも聞いたことがあるであろうスティーブ・ジョブズの物語です。アップル社のひとです(ざっくり)。映画はジョブズの3つの時代をピックアップしています。1984年、1988年、1998年。彼の絶賛されるプレゼンテーション、その舞台裏で何が起きていたのかという話。

監督はダニー・ボイル。「トレインスポッティング」「スラムドッグ$ミリオネア」などをつくっているひとです。そしてこの映画は脚本が話題のひとつであるので脚本家についてもふれると、脚本家はアーロン・ソーキン。「ソーシャルネットワーク」でアカデミー賞受賞したひとですね。「オデッセイ」の記事でもちょっとふれた「ニュースルーム」というドラマも全話脚本書いています。全話…のはず。私のような素人でもこの脚本は何なんだ!?と驚ける非常にわかりやすい凄さがこのひとにはあります。まぁとにかく情報量がすごい。この「スティーブ・ジョブズ」「ソーシャルネットワーク」「ニュースルーム」に共通していえるのは出演者がずーーーっと喋っていること。マジで絶え間なく誰かが喋っている。そして喋っている内容も濃い、めっちゃクレバー。このどれか1本見るだけでもわかると思います。「スティーブ・ジョブズ」の脚本は200ページぐらいあったそうです。ほかの脚本がどのくらいのページ数かってことは知らないですがこれは尋常じゃないぶあつさなんだなって察せられる。私は「ソーシャルネットワーク」すごく好きで、はじめて見たときはほかにない情報量の多さに圧倒されました。そしてこの映画がつくられると聞いたときのことです。アーロン・ソーキンマーク・ザッカーバーグFacebook創始者)に続きスティーブ・ジョブズの話書くのか!めっちゃ楽しみ!とわくわくしたんですがダニー・ボイルがメガホンとるときいてOh…?となりました!いまだから言う!先の述べた監督の2つの作品はだいすきなんですが、「トランス」とか正直残念極まりなかったので個人的にはむらがある監督であったし、史実を撮るひとというイメージがなかったんですね。エンタメ撮らせると映像と音楽が独特で見ているあいだ心地よい陶酔感に浸れるけれども。さらにさらにクリスチャン・ベールジョブズを演じると聞いていたら直前で降板してファスベンダーになったと聞いて、「もうだめかもしれない…」と思いました!いまだから言う!!(2度目)ファスベンダーがよくないんじゃなくて、クリスチャン・ベールは外見をかなり変貌させていくひとなので、実在の人物演らせるのはいいだろうなぁと思ったんです。ジョブズはまだ記憶に新しいひとで、顔もみんな記憶に濃いだろうし…ファスベンダーは外見を変えてくのは難しい気がするし…美しいし…(ファンの戯言)などと思っていたのでした。しかし!!結果としては!!映画もファスベンダーも最高でした!!!!!!どれくらい最高かって六本木で見て知り合いと解散した後に新宿で友だちと合流して2度目見たぐらいに最高でした。アホなのか。そしてまた前振り長くなった。

 

!ネタバレあり!

 

私はiPhoneiPodユーザーですがジョブズについてはほとんど知りません。アップルを創ったひとってことと、亡くなられたときにプレゼンテーションの動画見て英語がわからなくても非常にわかりやすいと思ったことぐらいです。ほかは断片的にガレージではじめたとかビル・ゲイツとの関係とか知っている程度。以前つくられたジョブズの映画も見ていないのでかなりまっさらな状態で見ました。そういう状態の私が見ても非常にわかりやすくまとめられていたスティーブ・ジョブズというひとの映画だったと思います。

そういうわけでどれだけ脚色されているのかも判断できないので、ひとつの映画作品として見たときにとてもおもしろい映画だと思いました。伝記映画だとかまえているといい意味で期待を裏切られる。ダニー・ボイルが得意(だと思っている)のエンタメ作品に仕上がっていました。まず物凄く的を絞っているので、混乱したり冗長に感じたりすることがなかった。2時間2分あるらしいけど90分ぐらいに思えたよすげえな。3つの時代のプレゼンテーション、その本番前の舞台裏での出来事。ジョブズと親しいひとたちとの関係性をひたすら会話劇で繰り広げていく。うーんおもしろかった。疑ってすまんかったダニー・ボイル。会話劇なんですがダニー・ボイルらしい独特の音楽の使い方と映像演出で目と耳もまったく退屈しなかった。最近だと「セッション」が音楽映画というよりアクション映画、とありましたが、それを思い出した。パンフに似たようなことあったと思うんですが、会話劇というかアクションであり、非常に舞台的なつくりでした。場所もプレゼンテーションの会場と限られていたしね。というかなり、かなり厳密に限定されている物語でありながら飽きさせないのがすごい。脚本の濃密さと監督の独特さに俳優たちが命を吹き込んでいた。こういうのなかなか見られないと思うのでめっちゃ楽しかったです。ファスベンダー扮するジョブズが最初のシーンで「Fuck you!」って言うところで「あ、これめっちゃおもしろい映画だわ」と思った。最後の娘とのシーンだけ失速して情緒的すぎるように感じたけれど、物語の着地点としては気持ちよかったしこれしかなかったなぁとも感じます。

 で、ファスベンダーなんですけど。「プロメテウス」で知ってなんとなく好きだな~からの「悪の法則」で超ファンになったんですが、2時間ほぼ出ずっぱり・喋りっぱなし・死なない・泣かない・しんどい映画に出ていないファスベンダーってはじめてじゃない!?!?!?ともうそれだけでファンとしてはありがたいというか、つーか昨年は日本公開作が1本もなくて1年ぶりの映画館で見られるファスベンダーがこの「スティーブ・ジョブズ」って急性ファスベンダー中毒で死にます!!とアホなこと言いたくなるくらいには気が狂った。完全に正気を失った。本当に白状すると1度目はその多幸感が物凄くて話の7割理解していなかったと思う。2度目でやっと頭に入り込んできた。本当にすまん。でも理解できてなくてもおもしろかったというか見聞きしてるだけで心地よかった。あと何回か見に行きます。しかし彼の作品もだいたい見たと思うんですが、そしてそのたびに凄まじい俳優だなと思うんですが、今回もすごかった。私の超素人的観点から、「声を変えられる俳優は一線を画して異常なほどやばい」というざっくりした基準があります。ヒース・レジャー(「ダークナイト」)、フィリップ・シーモア・ホフマン(「カポーティ」)とかですね。なので、ジョブズが喋り出したときに声が普段やほかの作品のファスベンダーの声とぜんぜんちがって「あ、これすごい」と語彙力ゼロの感想を抱きました。あと映画見てて老メイクがいいと思ったことってほとんどないんだけど、第3幕のジョブズのメイクはすごく自然な感じでよかったな。見た目はやっぱ寄せられないよなぁと思ってたけれど第3幕はときどきリアルなジョブズに見えた。もちろん声を変え、喋り方・動き方・しぐさとかでスティーブ・ジョブズを演じきっていたと思いますが。

 めっちゃ長くなってきてるけどまだ脇のひとたちについて話したい。ケイト・ウィンスレット扮するジョアンナとセス・ローゲン扮するウォズがそれぞれちがったすばらしさがあってそこも語りたいんですが、さらにもうもうジェフ・ダニエルズ扮するジョン・スカリーが!!もう!!この2時間ちょいの映画で手に汗握る状態で見たいちばんのシーンは第2幕のジョブズvsスカリーの口論シーンでした。ジェフ・ダニエルズは「ニュースルーム」の主人公でアーロン・ソーキンの脚本を3シーズンにわたりさばいている御大です。さすがである。感情を爆発させて怒鳴りあうシーンってストレス感じること多いんだけど(たぶん感情移入できてないとき)アーロン・ソーキンの脚本でそういうことはぜんぜんない。このお気に入りシーンとかめっちゃ気持ちよかったからな。ファスベンダーのこういうキレてる演技がずっと見たかったんだ!!っていう気持ちもあり。「人生最悪の夜」の回想シーンの入り込み方はダニー・ボイルらしいセンスを感じるし、この回想シーンの入れ方は全体的によかったです。会話が細切れになるのにスピード感は失わない。第3幕の実父のシーンもおなじ手法でしたね。娘の前で見せるものとはまたちがう本音やウィークポイントをスカリーに見せるところがとてもすき。娘には「出来損ないだから親になれない」だったけどスカリーには「出来損ないでも親でいてほしい」なんだなぁと、その対比を感じました。

まだまだあるもののいったんやめる…また書きたくなったら別記事に書きます。最後になりますがアラン・チューリングのくだりに泣きかけました。なぜなら昨年「イミテーション・ゲーム」で大号泣したからである。アラン・チューリングについて私は何も知らなかったのであの映画を見られてすごくよかったし、いまこそみんなが見るべき物語であったと思いました。なので記者が写真を見て「誰?」と言ったアラン・チューリングの功績を称えるべきだと説明したジョブズのさりげないけれどたしかな敬愛が印象深かったです。

この映画の原作となった本も読んでみたいな。長々とおつきあいいただきありがとうございました!