ななこのブログ

服を着て映画を見てごはんを食べてときどき旅に出るなどを綴ります

クリムゾン・ピーク(うまれてはじめてホラーを映画館で見た)


『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロ最新作!『クリムゾン・ピーク』予告編

 

クリムゾン・ピーク(原題: Crimson Peak)2015年・アメリカ・カナダ映画(日本公開・2016年1月8日)

(TOHOシネマズシャンテ・2D字幕・2016年2月4日鑑賞)

 

シャンテの地下にスクリーンあるの知らなかった。何で地下なんだよコエーよと文句を言いながら(ビビリ)見ました。年明けに「完全なるチェックメイト」をシャンテで見たときに予告見て最高に美しいけど最高に怖そう!!めっちゃ見たいけどめっちゃむり!!と言っていたのですが知り合いの方が見に行くというのでのっからせていただきました。

あらすじが説明しにくい。20世紀初頭(とパンフにあった)の話で、幼いころに母を亡くした女性が主人公です。彼女は母を亡くした後に母の幽霊に「クリムゾン・ピークに気をつけなさい」と助言をもらっていました。その後成長した彼女は幽霊が登場する小説を書いて作家になることを目指しています。そんな最中にある魅力的な男性と出会い、互いに惹かれあうのですが、彼女の父は相手の男とその姉を怪しみ調査させ…みたいな感じです。

監督はギレルモ・デル・トロです。パシフィック・リムの監督です。私はパシフィック・リムしか見ていない、そしてめっちゃ白状するとまぁふつうにおもしろいなぁぐらいでした(期待値高く見てしまったのでもう1度見直したいとは思っている)。ただこの監督の「パンズ・ラビリンス」がけっこうえぐいという感想を聞いたのと、私はほんっっっとうにマジでホラーグロが一切だめなので、そっちの系統ぽい「クリムゾン・ピーク」はむりだろ予告の映像美すさまじいし好きな俳優さんばっかだし見たい気持ちはあるけどあかんだろ!!と避けてました。何人かに「こわくないよ大丈夫だよ」と言われたけれどホラー耐性あるひとにそんなん言われても信じられません。本気のこわがりナメないでほしい。WOWOWで見た「バイオハザード」がしぬほどトラウマになって夜ねむれなくて姉の部屋にもぐり込んだぐらいなんだからな。それでも評判よさげだし勇気を出して行きました。いっしょに行ってくれたTwitterのふぉろわさんに感謝です。

 

!以下ネタバレあり!

 

結論からいうとこわくないなんてことはなかった。ただ最後めっちゃ笑った。よって後味はこわくなかったのでOKです。でもこわくないなんてことはなかったよ(2度目)。昔ながらのホラー演出といっていいのかな、音でビビらせる演出に何度もビクッとなりましたし。幽霊もパッと見はへいきなんですけれどよくよく見るとグロい気がするし痛そうなシーンは目をそらして画面の下半分を見ていましたし。最後20分以外はホラーだと思います。

それでも劇場で見る価値はあったと思いました。何よりも映画美術の美しさがすさまじい。圧巻。ビジュアルブック超欲しい。まず出ているメインの俳優さんたちが美しすぎる。ミア・ワシコウスカ扮するイーディス、トム・ヒドルストン扮するトーマス、ジェシカ・チャステイン扮するルシール。その美しさがあの20世紀初頭の舞台にとてもとてもマッチするものなんですよね。姉弟の住まう屋敷に行くまで思ったより前振り長いなと思ったんですが、それまでのイーディスが暮らしてる屋敷や舞踏会や葬儀のシーンすべてが美しいから常に目がよろこんでた。いいなぁ映画の舞台美術めっちゃ楽しそうつくりたいってなる。それでもイーディスが嫁いでクリムゾン・ピークに着いたときはあまりの美しさに息を呑みました。老朽化している屋敷なんですがそのぼろさがよけいに美を際立たせていて、舞い降りてくる雪や風のつめたさすら綺麗で、どこを切り取っても絵になる。そんなところにイーディスとトーマスとルシールが住んでるって天国かよ。地獄だったけど。

語彙力なくて美しいしかいえないので最後20分の死闘に話をうつします。ここが本当に語りたいところである。最後のほうになってチャーリー・ハナム演じるアランが屋敷にやってくるんですけれどもーーーこっから最高。それまでビビりまくってたのに本当に身体の力が抜けた。っていうか笑った。ただ見終わって数日、いま、あらためてよくよく考えてもすごい映画だったなと思います。ストーリー展開の陳腐さとかは正直この映画のなかで創り上げられている美しさと俳優たちの生まれ持つ美しさでぜんぶチャラだと思えるほど最高峰の美だったので私はいいんですが、この映画の男性像と女性像が。マジですごかったな!とじわじわ思い返すほどにきています。昨年話題となった「マッドマックス 怒りのデス・ロード」は性を超越したものでしたけれど、「クリムゾン・ピーク」は性の役割が逆転、というか何そればからしいって一笑に付している話であった。しみじみ。まぁ本当に性の役割とか本当ばからしいと思うんですけど。ボンドガールとかその名称いいかげんやめなよナメてんのか?って思うんですけど。ただこれって20世紀初頭の話であるし、未婚のイーディスが冒頭で女性たちにばかにされるシーンとか、書いた作品に女性が書くなら恋愛ものにってケチつけられるから筆跡で女性とわからないようにタイプ使うとか、そういうのが顕著にあります。そしてイーディスはまちがいなくそれに反抗し腹が立っている。これは物語上の伏線ではなくイーディスというキャラクターの伏線だったのだといまならわかる。イーディスはマジでめっちゃつよいんです。メンタルだけじゃない。つよい(物理)です。ルシールに殺されそうになってピンチ!なところにアランが来てくれるんですが、最終的にはイーディスがルシールを倒してアランを救うんですよ。アランははっきり言って何の役にも立ってないからな。あんた何しに来たの?だよ。トーマスとルシールの男女関係は、姉弟であるので男と女ってフィルターだけじゃ語りきれないと思うのですが、アランとイーディスについては実にはっきりと役割が逆転しておりました。アランについて表現すると、「主人公がピンチだということを遠隔で知り、これは助けに行かないととひとりでがんばって助けに行き、そうしたら敵に刺され(しかも敵にはちょっとたすけられている)敵と戦うこともないまま戦線離脱、最後には主人公に支えられ救われる」という感じでした。これひとむかし前のハリウッド映画のヒロインじゃん!!!!!!と衝撃を受けたよ。何の役にも立てないけどただ主人公が好きでがんばったの!っていうあれだよ。イーディスは足を骨折してしまってるって姫抱っこされているシーンとかあったはずなんですけれど、結局はアランが隠れているあいだに走って雪のなかでルシールと最後の対決をしスコップで殺るからね。そして私はルシールが走るたびにフワッ…とお洋服が舞うのが美しくて笑ってしまった。ジェシカ・チャステインだいすきです。

パンフの監督のインタビューで、「イーディスは現在、ルシールは時代遅れの観念を抱いている」というようなことが書いてあったんですが、つまりそういうことでした。最後のあのナタvsスコップは、過去vs現在だったということだったんですね。そしてスコップ、つまり現在が打ち勝ったと。そしてイーディスは未来に生きていくのだ。本当に性の超越とかじゃなくて完全に大勝利をおさめていたので逆転という表現を使ってしまいましたが、とにかくそういう意味でも映画のストーリー的にも最後のイーディスの勝利はきもちよかったです。トーマスが幽霊になって、イーディスにふれられて消えていく姿とか完全にヒロインじゃん。すげーよ監督。監督のことだいすきになりました。「パシフィック・リム」見直します!ありがとうございました!

 

ギレルモ・デル・トロ クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス

ギレルモ・デル・トロ クリムゾン・ピーク アート・オブ・ダークネス